小売売上高とその構成要素
小売売上高は、消費者の購買活動を直接反映する経済指標であり、特にFX取引においても重要な役割を果たします。
GDPの約7割を占めるのがこの小売売上高であり、先々のGDPを予測する上でも大切です。
消費者支出の変動が経済全体に与える影響は大きく、小売売上高の構成要素を分析することで、今後の市場動向を予測しやすくなります。
この記事では、小売売上高の5つの主要な構成要素について具体的なデータとともに解説し、予測に役立つ指針を提供します。
1. 小売売上高の主要構成要素
小売売上高は、いくつかの主要な業種から成り立っています。
ここでは、自動車販売、食品・飲料品店、ガソリンスタンド、一般商品店、非店舗小売業の5つのカテゴリに焦点を当て、影響度順にその具体的な構成比率と市場動向を見ていきます。
前回の小売売上高がとても強かったのは、自動車と部品の売上高が3.6%も上がったからね
1.1 自動車・自動車部品ディーラー
自動車およびその部品の販売は、小売売上高全体の中で最大の割合を占めます。アメリカの2023年のデータでは、自動車関連の売上高は小売全体の約22%を占めました。
このセクターは、金利の上昇や失業率の増加に非常に敏感です。2022年末から2023年初頭にかけて、FRBの金利引き上げにより自動車ローン金利が上昇し、消費者の購買意欲が減少しました。その結果、2023年の自動車販売は前年同期比で約4%減少しています。
この動向はFX市場にも影響を与えます。自動車販売が好調であれば、経済の回復基調が強まると予想され、ドルが強含む傾向にあります。逆に、販売不振は経済の先行きに不安をもたらし、ドルの下落要因となります。
調べてみると、有名どころでバンク・オブ・アメリカの新車ローンは6%台にまで下がっていました。少し前まで7〜8%台だったことを考えると、この下落は前回の3.6%上昇に貢献している可能性はあります。こちらは堅調さがありそうなので予想を上振れそう。
1.2 食品・飲料品店
食品や飲料品の販売は、景気の変動に比較的強い安定的なセクターです。2023年のデータでは、食品および飲料品店の売上は小売売上高全体の約13%を占めており、前年同期比で2%増加しました。
特に、インフレによる食品価格の上昇が売上増加の一因となっています。この辺りは、インフレが急速に緩和し始めたことから、その売上高も今後は減少傾向にはあるかもしれません。
このセクターの安定性は、リスク回避の傾向が強まる局面でも消費が持続するため、消費者支出全体を下支えする役割を果たします。
FX取引においても、食品セクターが安定していれば、その国の経済が深刻なリセッションに陥っていないと判断されることが多く、通貨価値の急激な下落を防ぐ要因となります。
消費者が実際に購入した価格である、PCEは横ばいでまだ下落していないことから、本項目は低くない上振れ材料です。
1.3 ガソリンスタンド
ガソリンスタンドの売上は、原油価格に大きく依存しています。2023年にはガソリンスタンドの売上が全体の約10%を占めましたが、原油価格の変動により大きな振れ幅が見られました。
例えば、2022年後半の原油価格急騰により、ガソリン価格も上昇し、消費者支出の一部がガソリン代に吸い取られた結果、他の消費が抑制される状況が見られました。
FX市場においては、原油価格が通貨価値に与える影響が大きく、特に資源輸出国の通貨(カナダドルやロシアルーブルなど)に強い影響を与えます。ガソリンスタンドの売上高は、その国の消費者支出の方向性を見極める上で重要な指標となります。
米国のガソリン価格推移は8月で下落幅がややありました。この辺は原油価格を見ても以前から伝えている通りです。データとしては下落材料です。
1.4 一般商品店
一般商品店には、デパートやディスカウントストアなど、多岐にわたる商品を販売する店舗が含まれます。
このセクターは、消費者の購買意欲を強く反映するため、景気の状況に大きく左右されます。2023年のデータでは、一般商品店の売上は全体の約11%を占め、前年同期比で約3%の増加を見せました。
特に、アメリカでは2023年にインフレの影響で消費者の購買行動が変化し、ディスカウントストアの売上が増加しました。
これにより、消費者の節約志向が強まっていることが示されています。一般商品店の売上が堅調である場合、消費者信頼感の改善が期待され、それがFX市場での通貨価値上昇に繋がることがあります。
この辺はPCEの横ばいと各消費者マインドのデータが横ばいであることから、今回の構成要素を左右するデータとしては弱いです。消費者マインドはさほど改善していません。わずかに上振れはプラス材料。
1.5 非店舗小売業
非店舗小売業、特にオンラインショッピングや通信販売の売上は急速に成長しています。2023年には、このセクターが全体の約14%を占め、前年同期比で8%以上の増加を記録しました。
特に、COVID-19パンデミック以降、オンラインショッピングの普及が加速し、アマゾンなどの巨大EC企業が市場を牽引しています。
この成長は、消費者の購買行動の変化を反映しており、非店舗小売業の売上が増加すると、消費のデジタルシフトが進んでいることを示唆します。
これにより、通貨に対する信頼感が強まり、為替市場においてもポジティブな影響を与える可能性があります。
この辺は前回の小売売上高を的中させた構成要素としては、今回の前月比では大きく下落する材料です。ここが前月比の予想を下げさせます。
2. 小売売上高と為替市場、経済への影響
小売売上高のデータは、FX市場における通貨の動向ひいては経済を予測するための重要な指標です。GDPの7割を占めるので内訳データも私は見ています。
特に、自動車販売や非店舗小売業の成長が強ければ、経済の活性化が期待され、その国の通貨は強くなる可能性があります。
一方で、ガソリン価格の上昇が消費を圧迫する場合、経済の先行きに不安が生じ、通貨価値にネガティブな影響を与えることもあります。
例えば、アメリカの小売売上高が予想を上回る結果となった場合、ドルが他の通貨に対して強含みとなることがよくあります。
特に、自動車や一般商品店の売上が好調であれば、消費者の購買力が高まっていると見なされ、FX市場ではドル買いの動きが強まります。
3. 構成データを確認した上での結論と予測
いかがだったでしょうか。
小売売上高の各構成要素を具体的に分析することで、経済をより正確に把握し、FX取引における意思決定をサポートすることが可能です。
特に、自動車販売や非店舗小売業の動向が強ければ、今後の市場に対する楽観的な見方が強まることが多く、通貨価値にポジティブな影響を与える可能性があります。
私の今回の予想としては、予想を上振れてくるものの前回よりは当然下がるという結論です。
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DAKURA
本記事の予測に確実性はありません。あくまで参考です。