PMIと相場
PMI(購買担当者景気指数)は、相場に大きな影響を与える指標の一つです。毎月発表されるPMI速報値は、米国経済の現状や将来を反映し、その結果は相場に瞬時に反映されることが多いです。
この記事では、PMIの構成要素を詳しく分析し、それぞれのデータが相場にどう影響するのかを解説します。
PMIとは何か?その重要性を再確認
米国のPMI(購買担当者景気指数)は、製造業やサービス業の経済活動を評価するための重要な経済指標です。
この指数は、企業の購買担当者へのアンケート調査に基づいており、企業の新規受注、在庫、雇用、供給者の納期などの要素が総合的に評価されます。
PMIの数値が50を上回れば景気拡大、50を下回れば景気縮小を示し、市場では経済の方向性を早期に示す「先行指標」として注目されています。
また、GDP成長率とも相関があり、PMIの動向がその後の経済成長を予測するための重要な手がかりとなります。
特に米国では、ISM(Institute for Supply Management)によるPMIが主要な指標として広く認識されており、毎月発表されると市場はその結果に敏感に反応します。
さらに、インフレ圧力や雇用市場の変化を捉える指標としても活用され、金融政策の決定にも影響を与える可能性があります。
トレーダーにとっては、PMIの数値は市場の方向性を読むための重要な材料であり、その結果に基づいて取引戦略を立てることが可能です。
同日に欧州を主要に世界各国でPMIが同日に発表されることが多く、それらの数値から米国PMIの発表に向けて相場が動くこともしばしばあります。当日はよく注意しましょう。
小売売上高と過去の値動き(日足と1分足)
前回の速報値は製造業が15ヶ月ぶりの低水準でした。
マーケット総合の内訳を確認すると、モノ、サービスの平均販売価格が今年3月以来の高水準です。さらに投入価格指数は59.1もあり、前月57.8(それまでもこの高止まり水準を維持していた)から飛び抜けました。
同様に販売価格指数は52.9から54.7へと伸びています。本日までのインフレ懸念とドル円の急上昇が前回の速報値から重なります。
前回は製造業の弱さとサービス業の強さが速報で発表され、一時的にドル円は20銭ほど円高の後に最大で50銭ほど円安となり、その後、全戻ししました。PMIによくある値動きとも言えます。
前回のPMIの予想について
前回の記事はこちらになります。以下の画像のように、製造業の弱さとサービス業の強さを的中させられました。
構成要素ごとの影響分析ー相場を予測するためのデータ
PMIは主に次の5つの構成要素から成り立ち、それぞれが異なる影響度の割合で総合指数に寄与します。影響度を示す割合は、経済情勢によって変わりますがこのようなところです。
- 新規受注 New Orders – 影響度★★★★☆
- 生産(製造業)/事業活動(サービス業)Production/Business Activity 影響度★★★★☆
- 雇用 Employment – 影響度★★☆☆☆
- サプライヤーの納期 Supplier Deliveries – 影響度★★☆☆☆
- 在庫 Inventories – 影響度★☆☆☆☆
新規受注:最も重要な先行指標
PMIの中でも新規受注は、米国経済の需要動向を反映する重要な先行指標です。企業が新規注文を受けることで、将来的な生産の増加が見込まれるため、経済の好調を示します。
特に米ドルは、新規受注の強さに反応しやすく、好調な結果が出た場合にはドル円が上昇する傾向があります。
生産・事業活動:現在の経済状態を反映
生産(製造業)や事業活動(サービス業)は、企業の現状の稼働状況や経済活動の強さを測る指標です。これらのデータは、新規受注と同様に経済全体の健康状態を示しますが、特に直近の経済パフォーマンスを把握する上で重要です。
生産活動が堅調であれば、米ドルの強さが示され、ドル円は上昇しやすいです。
製造業PMIの生産指数が上昇すれば、企業の活動が活発であることを示し、ドル円にポジティブな影響を与えます。逆に、生産活動の減速は経済の鈍化を示し、ドル売りが進むことがあります。
雇用:労働市場の強さと米ドルの連動性
雇用もまた重要な構成要素であり、企業の人員配置がどのように推移しているかを示します。労働市場が強い場合、消費者支出が増加し、経済全体の底堅さが確認されます。
強い雇用データは、米ドルの上昇要因となり、ドル円が上昇することが多いです。一方、雇用データが予想を下回る場合、景気後退の懸念が強まり、ドル売りが進む可能性があります。
サプライヤーの納期と在庫:インフレ指標としての役割
サプライヤーの納期は、供給チェーンにおける遅延や圧力を反映します。納期が長い場合、需要が供給を上回っているか、供給が不足していることを示します。特に供給不足がインフレ圧力を引き起こす場合、FRBの金利政策に影響を与え、ドルの価値が上昇する可能性があります。
在庫もまた経済の需給バランスを測る指標です。在庫が増加することは需要の減退を、在庫の減少は需要の増加を示唆します。これらのデータも市場の動向に影響を与えるため、注意深く見守る必要があります。
PMIの構成データと予測
PMI速報値の発表後にドル円相場を予測するためには、前回の以下のポイントに注目することが重要です。
製造業PMIの構成データ
新規受注(New Orders)が増加、生産活動(Production)はさらに大きく増加して、上振れの材料ね。雇用(Employment)は鈍化。サプライヤーの納期(Supplier Deliveries)もうまく回っている。在庫(Inventories)減でさらにインフレ加速かしら。
サービス業PMIの構成データ
新規受注(New Orders)、事業活動(Business Activity)、サプライヤーの納期(Supplier Deliveries)、在庫(Inventories)の多くの項目でとっても強い材料ね。雇用(Employment)が製造業と共に低いのが、今注目されている今後の雇用に悪材料だわ。
新規受注と生産活動を最優先に確認
PMIの中でも最も注目すべきは新規受注(New Orders)と製造業の生産活動(Production)、サービス業の事業活動(Business Activity)です。
これらのデータは、経済の先行指標として市場のセンチメントに直結するため、相場に与える影響が大きいです。中でも現在の米国経済のサービス業の偏りは強く、製造業に大きな乖離がなければ、同時発表の場合はサービス業が比較的重要視されます。
予想を上回ると、米ドルの買いが進みやすくなり、ドル円は上昇しやすいです。
今回は先行指数が揃って強く出ています。
サービス業はすでにとても強いので、更なる上昇の難しさはありますが、仮に下回っても十分に強い数値と判断しています。
今回もデータ的には強さが相場全体を押し上げて株価やドル円を上昇させやすいデータになります。
雇用状況を確認
雇用データが予想を大きく上回る場合、米国の労働市場が堅調であることを示し、消費の増加やインフレ圧力の高まりが予測されます。
これがFRBの利上げ観測を強め、ドル円は上昇する傾向にあります。一方、雇用データが悪化すれば、ドル円の下落リスクが高まります。
今回は製造業とサービス(非製造業)で下落傾向なところと、ハリケーン被害が長引いてしまうことが雇用の懸念材料です。
新規失業保険申請件数が悪化しているから余計に心配な数値だ。今回の速報後もデータを追っていかなきゃな。
まかせてっ!
サプライチェーンの動向を確認
供給チェーンの混乱やインフレ圧力が高まっているかどうかは、サプライヤーの納期に現れます。納期の長期化が続けば、インフレ懸念が強まり、FRBの政策スタンスがタカ派になる可能性があり、これがドル円の上昇材料となることがあります。
サプライチェーンに関しても、大きく鈍化しない傾向にあります。
各国PMIの傾向
2024年10月24日の各国PMIは、これまでの上記の構成データからの私の予想を表してるかのような結果が出ています。全てではありませんが、製造業の反発とサービス業の高止まりキープです。
フランス | 製造業購買担当者景気指数 (10月) | 44.5 | 44.9 |
フランス | サービス業購買担当者景気指数 (10月) | 48.3 | 49.8 |
ドイツ | 製造業購買部協会景気指数 (10月) | 42.6 | 40.7 |
ドイツ | サービス業購買部協会景気指数 (10月) | 51.4 | 50.6 |
ユーロ | 製造業購買担当者景気指数 (10月) | 45.9 | 45.1 |
ユーロ | マーケット総合PMI (10月) | 49.7 | 49.8 |
ユーロ | サービス業購買部協会景気指数 (10月) | 51.2 | 51.5 |
イギリス | 総合PMI (10月) | 51.7 | 52.6 |
イギリス | サービス業購買部協会景気指数 (10月) | 51.8 | 52.3 |
経済指標を味方につけるには、市場のコンセンサスと乖離した結果に注目
市場は常にコンセンサスを織り込みつつ動いていますが、経済指標の速報値が予想を大きく外れた場合、為替市場では急激なポジション調整が行われることが多いです。
こうした場合は、ボラティリティが急激に上昇し、短期的なトレードチャンスにも成り得ることがあります。
これは当日までのトレンドにも左右され、上振れの予想や下振れの予想は必ずしも経済指標の発表前にエントリーするべきものではありません。前回の同指標の速報を受けての値動きや現在のサポートラインを意識し、より安全にポジションを取ることが重要であります。
4. まとめーPMI構成データから予測するー
いかがだったでしょうか。
説明にもあったように「製造業の反転上昇」を示唆するデータと「サービス業の引き続きの強さ」がデータに表れています。今回の予想値も同じように、製造業の50割れ、サービス業の50以上が予測値となっています。
ただ、今回もサービス業も予想値がとても高く、構成データからも強いですが、PMIは3つの指数が同時に発表されるので初動は上下に髭がつきやすいことに注意してください。
また、本日発表されている各国のPMIデータが揃って鈍化を示してることにもあります。景気の拡大を確認してからのリスクオンの継続を狙う方が建設的かもしれません。
皆様の利益を願っております。
あっ Xへのコメント忘れずに笑
DAKURA