1. ISM製造業指数とは?
ISM(Institute for Supply Management)製造業指数は、米国経済において重要な指標です。毎月発表されるこの指数は、新規受注、生産、雇用、供給業者の納期、在庫の5つの主要項目を集計し、米国製造業の全体的な景況感を数値化します。これらの要素は、50を基準に拡大や縮小を示し、市場参加者にとって経済の方向性を見極める手掛かりとなります。
製造業は米国経済全体の約11%を占めますが、その影響は広範で、ISM指数は、GDP成長率、雇用状況、企業の収益性に直結するため、市場においても注目されています。米ドルの動向に敏感に反応し、主要通貨ペアで大きな変動を引き起こします。
2. 製造業指数の予測に役立つデータ
ISM製造業指数の予測には、複数の経済データが有効です。これらのデータは、過去のパターンや関連性から指数を予測するための重要な材料となります。以下は、予測に役立つデータを影響度順に記載しています。
- PMI(Purchasing Managers’ Index)と新規受注
PMIは製造業の経済活動を広範囲にカバーしており、ISM指数の動向に大きな影響を与える先行指標です。50以上の値が拡大を、50以下が縮小を示す点でもISM指数と類似しています。これらは簡単に言うと、調査機関の違いによるものです。特に、PMIの新規受注と生産のサブコンポーネントは、ISM指数と強い相関関係を持ちます。
PMI、9月の総合の新規受注は52.4と、前月の53.0から低下しています。
また、先行指標となる前回のISM製造業景気指数の新規受注は44.6と、7月の47.4から低下しています。
長期低迷の可能性を示唆します。 - 工業生産指数と耐久財受注
工業生産は、製造業の実際の生産活動を測定するもので、ISM指数が示す「製造業の活動感」と密接にリンクしています。実際の生産高が増加している場合、ISM指数にもポジティブな影響を与えます。上記のFREDのデータでは、7月の減少と8月(9月発表)の回復を示しています。
また、耐久財は長期間にわたる投資を反映しており、企業の設備投資や消費者の大きな買い物の意欲を測る指標です。この数値が増加する場合、製造業全体が好調であり、ISM指数にもプラスの影響を与えます。特に、新規耐久財受注の動きがISM指数を大きく予測します。
9月26日に発表された、耐久財受注は前月比で-0.2から0.5へと上昇しています。 - 仕入れ価格指数
仕入れ価格は製造業者が材料や部品を購入する際のコストを反映し、インフレ圧力や生産コストの変動を示します。この値が高いと、製造業者が生産コストを転嫁する可能性が高まり、製造業全体の活動が押し下げられるリスクが出てきます。
52.9から54.0に上昇に上昇しており、こちらも状況の悪さを示しています。 - 小売売上高
小売売上高は消費者の支出動向を示し、製造業者が生産を増加させる要因になります。特に、耐久財の売上高が伸びると製造業指数も上昇しやすいです。
3. ISM製造業指数がFXに与える影響
ISM製造業指数がFX市場に与える影響は、特に米ドルに関連して顕著です。なぜなら、米国経済の製造業部門が縮小または拡大することは、米国の金利政策や中央銀行の施策に直接的な影響を与えるからです。
例えば、ISM指数が50を超えて上昇すると、投資家は米国経済が強い成長基調にあると認識し、米ドル買いが進む傾向にあります。ドル円は敏感に反応し、日本円に対して米ドルの価値が上昇する可能性は高いです。
逆に、50を下回る場合、経済の縮小懸念から米ドル売りが進み、リスクオフの動きが顕著になります。
この場合、円やスイスフランなどの安全資産に資金が流れやすくなります。注意したいのは、景気の拡大中や縮小中を示しても、その中で回復傾向が強いことを示唆すれば、逆に動くことも考えなければなりません。
また、ISM指数が予想よりも大きく下落した場合、市場はFRBの金利引き下げ姿勢を強化する可能性を織り込み、金利下落を見越してドル安となることも考えられます。
4. 予測と取引戦略
経済指標の発表前後におけるFX取引には、いくつかの戦略があります。ここでは、指数を予測し、その結果を基にトレードするためのアプローチを紹介します。
1. 発表前にポジションを取る戦略
- 前項目のデータをもとに、ISM指数が発表される前にポジションを取る方法があります。これらの指標が市場予想を下回っていれば、ISM指数がネガティブな結果となる可能性が高く、米ドルの売りポジションを持つ戦略があります。しかし前回のドル円1分足の乱高下もあり、今回は発表直前直後にはやや慎重になりたいです。
2. 発表後のリバウンドを狙う戦略
- ISM指数発表直後に急激な市場反応が見られる場合、その後のリバウンドを狙うトレードもあります。たとえば、予想外に強い指数が発表された場合、一時的に米ドルが急騰しやすいです。現在はドル円が日に1円幅以上も何度も上下に動く状態が続いていますが、週末の雇用に関する指数を考慮し、雇用の悪化を見込んだ急騰からの売りもひとつの手段になりそうです。短期の逆張りポジションとなります。
3. 長期的視点でのポジション
- ISM指数の結果が一貫して強い場合、米国経済全体の堅調な成長を示唆し、長期的なドル買いトレンドが形成される可能性があります。このため、指数が好調であることを確認した後、今週の雇用やISM非製造業のポジティブな結果を予測するならば、しばらくポジションを保持する戦略も考えられます。
5. ISM製造業指数の構成データから速報値を算出
いかがだったでしょうか。
私はISM製造業景気指数の長期低迷の可能性は高いと予測します。雇用は7月43.4から8月46.0と回復していましたが、以前として弱いです。先行している新規受注がPMIとISM揃って製造業は低下傾向にあるのも前述のとおりです。回復傾向を示すような、「46.8→47.2→今回予想47.6」ですが、以前として景気の縮小は示しており、上振れ時の急騰要素が低い可能性があります。
ISM製造業の直近としては、業種別で機械、紙製品、輸送機器、電気機器、家電製品・部品を含む12業種が縮小しています。(一次金属、家具、コンピューター・電子製品を含む5業種は活動が拡大)
ISM製造業指数は、FX市場において重要な役割を果たす指標であり、その動向を予測することは取引戦略において有効です。関連データを用いた正確な予測と適切なトレード戦略を組み合わせることで、利益を最大化するチャンスが広がるかもしれません。
経済指標に基づいたFX取引は、データの正確な理解と市場の反応を読み取る力が求められます。ISM製造業指数もその一環として、予測と戦略に活用していきましょう。
今回はJOLTS求人という、雇用に関する重要経済指標が同時刻に発表されますので、そちらに関しても投稿していきます。求人、雇用に関しては予測が難しいことから、同時刻発表であることには注意が必要です。
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DAKURA